Apache HTTP Serverの二重解放CVE-2026-23918
ASFの2026年5月4日の公表によると、HTTP/2を使うApache HTTP Server 2.4.66〔注1〕に二重解放の脆弱性CVE-2026-23918があり、リモートでコードを実行される可能性がある[1]。ASFは重要度をimportantとし、同じ日に公開した2.4.67への更新を推奨した[1]。NVDの10月26日更新の記録には、CISAのKEVへの追加日が無い[11]。
脆弱性の内容
ASFは発見者として、striga.aiとisec.plの研究者2人を挙げた[1]。題は「Apache HTTP Server: http2: double free and possible RCE on early reset」である[1]。
| 項目 | 値 | 資料 |
|---|---|---|
| CWE | CWE-415(二重解放) | [10] |
| CVSS 3.1(CISAのADP) | 8.8(AV:N/AC:L/PR:L/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H) | [10] |
| 重要度・CVSS 3.1(Red Hat) | Important、8.8 | [4] |
| CVSS 3.1(Amazon Linux) | 8.1(AV:N/AC:H/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H) | [9] |
| CVSS(SUSE) | 3.1は8.1、4.0は9.2 | [8] |
| 優先度(Ubuntu) | high | [5] |
発見者の一人が所属するStrigaの技術解説によると、mod_http2は終わったストリームをその場で解放せず、ポインタを後始末の配列m->spurgeに積む[16]。後の処理でこの配列をたどり、各ストリームのプールを破棄する[16]。クライアントがHEADERSでストリームを開き、直後に0以外のエラーコードのRST_STREAMを送ると、そのストリームは多重化部に登録されないまま2つのコールバックがそれぞれ後始末を呼ぶ[16]。Strigaは、同じストリームに特定の順で送った2つのフレームが、同じh2_streamのポインタを配列に2回積むと書いた[16]。
Strigaは、エラーコード8(CANCEL)のRST_STREAMで足り、TCP接続1本とフレーム2つでワーカープロセスをクラッシュさせられると書いた[16]。Apacheはワーカーを起動し直すが、処理中の要求はすべて失われる[16]。CVSSの「PR:L」は控えめで、発火に認証も特定のパスも特別なヘッダーも要らないとした[16]。
Red Hatは、HTTP/2の早期のストリームのリセットで起き、認証前にリモートのクライアントが行使しうるため、ModerateでなくImportantにしたと説明した[4]。
Strigaによると、同じクラッシュは2025年12月にBugzilla 69899で安定性の不具合として報告され、2日後にtrunkで修正された[16]。CVEは割り当てられず、2.4.66が公開の安定版のままだった[16]。Strigaは、自社が独立に見つけて行ったセキュリティの報告が、CVEと2.4.67につながったと書いた[16]。
時系列
| 日付 | 主体 | 内容 | 資料 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | ASF | 2.4.66を公開した | [1] |
| 2025年 | - | PR 69899で報告された〔注2〕 | [3] |
| 2025年 | - | r1930444とr1930796で修正された | [3] |
| 2026年 | Striga | 2.4.66で見つけた不具合をApacheのセキュリティチームに報告した | [16] |
| 2026年 | ASF | 2.4.67を公開し、oss-securityにCVE-2026-23918の告知を送った | [1、2、3] |
| 2026年 | Striga | 技術解説を公開した | [16] |
| 2026年 | Canonical | USN-8239-1を出した | [6] |
| 2026年 | JPCERT/CC・IPA | JVNVU#99705957を公開した | [12] |
| 2026年 | Exploit Database | 第三者が作ったDoSの実証コードを掲載した | [18] |
対象の製品と版
ASFのmod_http2の文書では、このモジュールは2.4.17以降で使え、HTTP/2の処理をlibnghttp2に頼る[21]。HTTP/2の機能を使うには、Protocolsディレクティブで有効にする必要がある[21]。
Strigaの技術解説では、2.4.66にはmod_http2がコンパイル済みで含まれる[16]。多くのLinuxディストリビューションのパッケージでは既定で有効でないが、本番のHTTP/2の環境では広く有効にされている[16]。コード実行の連鎖は、APRのmmapアロケータ、マルチスレッドのMPM、mod_statusを読み込んだビルドで、別の情報漏えいと組み合わせたときに成り立つ[16]。mmapアロケータはDebian系と公式のhttpdのDockerイメージの既定で、MPM preforkは影響を受けない[16]。
Ubuntuは、上流の説明では影響を受けるのは2.4.66だけだとした[5]。問題の核心は以前の版にもあるが、mod_http2 v2.0.33のメモリ割り当ての変更が無いと二重解放にならないと説明し、resoluteより前の版を影響なしとした[5]。
| 配布元 | 状態 | 修正版・アドバイザリ | 資料 |
|---|---|---|---|
| Canonical(Ubuntu 26.04 LTSのapache2) | 修正版あり | 2.4.66-2ubuntu2.1 | [5] |
| Canonical(Ubuntu 14.04〜25.10のapache2) | not-affected | - | [5] |
| Debian(bookworm・trixie・unstableのapache2) | 修正版あり | bookworm 2.4.67-1~deb12u2、trixie 2.4.66-1~deb13u2、unstable 2.4.66-5 | [7] |
| Debian(bullseyeのapache2) | not-affected(HTTP/2の退行が入っていない) | - | [7] |
| SUSE(apache2ほか) | Resolved | SUSE-SU-2026:2103-1(2026年5月28日)ほか | [8] |
| Amazon Linux(Amazon Linux 2023のmod_http2) | Fixed | ALAS2023-2026-1724 | [9] |
| Amazon Linux(Amazon Linux 2のhttpd・mod_http2、Amazon Linux 2023のhttpd) | Not Affected | - | [9] |
| Red Hat(Red Hat Hardened Imagesのhttpd-main) | 修正版あり | RHSA-2026:13938、httpd-main-2.4.67-0.1.hum1 | [4] |
| Red Hat(RHEL 6〜10のhttpd・mod_http2、JBoss Core Servicesのmod_http2) | Not affected | - | [4] |
Endolumは、スイスでApache/2.4.66を名乗る公開ホストを7'141と数えた(スイスのApacheの11.4%)[17]。749ホストのTLSの試験でh2のALPNを確かめたのは111(14.8%)で、実際に悪用できるのは約290ホストと見積もった[17]。
悪用の状況
CVE記録のCISAのSSVCの評価は、Exploitationがnone、Automatableがno、Technical Impactがtotalである[10]。MS-ISACの勧告は、DoSとコード実行の概念実証コードが存在すると書いた[15]。
Strigaの概念実証は管理された実験環境で動かしたもので、system()とscoreboardのアドレスを得る情報漏えいを前提にしている[16]。単独で成り立つリモートのASLR回避は作っていない[16]。実験環境は公式の「httpd:2.4.66」のイメージでstatusモジュールを有効にしたもので、x86_64で試した[16]。試行は確率的で、実行の成功まで数分から数時間かかるとした[16]。
The Hacker Newsは、発見者の一人がメールで同紙に深刻度を「critical」と述べたと報じた[19]。同じ記事は、DoSはmod_http2とマルチスレッドのMPMを使う既定の構成で容易に成り立つという発見者の言を伝えた[19]。
CVE-2026-23918を名指しした注意喚起は、JVN、JPCERT/CCのWeekly Report、シンガポールのCSA、MS-ISACが出した[12、13、14、15]。JVNは影響をDoSまたは任意のコードの実行とした[12]。
修正と回避策
ASFは2.4.67で11件のCVEを修正した[1]。announceへの投稿では、2.4.67をセキュリティ・機能・バグ修正のリリースと説明した[2]。SecurityWeekは、11件のうち10件はそれまでのすべての版に影響すると報じた[20]。
| 重要度 | 件数 | 含まれるCVE | 資料 |
|---|---|---|---|
| important | 1件 | CVE-2026-23918 | [1] |
| moderate | 2件 | CVE-2026-24072(mod_rewriteの権限昇格)、CVE-2026-33006(mod_auth_digestのタイミング攻撃) | [1] |
| low | 8件 | CVE-2026-28780(mod_proxy_ajpのバッファオーバーフロー)ほか | [1] |
Strigaは、2.4.67がm_stream_cleanupでspurgeに積む前に重複を除くと書いた[16]。シンガポールのCSAは、直ちに最新版へ更新するよう求めた[14]。
Red Hatは緩和策として、LoadModule http2_moduleの行をコメントアウトして再起動し、mod_http2を無効にする方法を挙げた[4]。この措置はHTTP/2に頼るサービスに影響すると書いた[4]。
未公表の事項
- PR 69899の報告から2.4.67の公開までのASFの経緯
- isec.plの研究者による報告の日付と経緯
- 世界全体で影響を受ける公開サーバーの数
注
出典
当事者
- [1]The Apache Software Foundation『Apache HTTP Server 2.4 vulnerabilities』(2026年5月4日公開)
- [2]The Apache Software Foundation『[ANNOUNCEMENT] Apache HTTP Server 2.4.67 Released』(2026年5月4日公開)
- [3]The Apache Software Foundation『CVE-2026-23918: Apache HTTP Server: http2: double free and possible RCE on early reset』(2026年5月4日公開)
関係組織
- [4]Red Hat, Inc.『CVE-2026-23918』(2026年5月4日公開)
- [5]Canonical Ltd.『CVE-2026-23918』(2026年5月5日公開)
- [6]Canonical Ltd.『USN-8239-1: Apache HTTP Server vulnerabilities』(2026年5月6日公開)
- [7]Debian Project『CVE-2026-23918』(公開日不明、2026年11月7日閲覧)
- [8]SUSE LLC『CVE-2026-23918 Common Vulnerabilities and Exposures』(公開日不明、2026年11月7日閲覧)
- [9]Amazon Web Services, Inc.『CVE-2026-23918』(2026年5月4日公開、2026年5月6日更新)
公的機関
- [10]CVE Program『CVE-2026-23918』(2026年5月4日公開、2026年7月15日更新)
- [11]National Institute of Standards and Technology『CVE-2026-23918』(2026年5月4日公開、2026年10月26日更新)
- [12]一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター・独立行政法人情報処理推進機構『JVNVU#99705957: Apache HTTP Server 2.4における複数の脆弱性に対するアップデート(2026年5月)』(2026年5月8日公開)
- [13]一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター『Weekly Report 2026-05-13号』(2026年5月13日公開、2026年5月15日更新)
- [14]Cyber Security Agency of Singapore『High Severity Vulnerability in Apache HTTP Server』(2026年5月7日公開)
- [15]Center for Internet Security, Inc.『A Vulnerability in Apache HTTP Server Could Allow for Remote Code Execution』(2026年5月6日公開)
調査・観測
- [16]Striga sp. z o.o.『For a Fistful of Dollars: Less than $100 of Compute Surfaces Pre-auth RCE in Apache httpd』(2026年5月6日公開)
- [17]Endolum『How exposed is Switzerland to CVE-2026-23918?』(2026年5月5日公開)
- [18]OffSec Services Limited『Apache HTTP Server 2.4.66 - 'mod_http2' Double-Free Denial of Service』(2026年5月26日公開)
報道機関
- [19]The Hacker News『Critical Apache HTTP/2 Flaw (CVE-2026-23918) Enables DoS and Potential RCE』(2026年5月5日公開)
- [20]Wired Business Media『Critical, High-Severity Vulnerabilities Patched in Apache MINA, HTTP Server』(2026年5月5日公開)
背景資料
- [21]The Apache Software Foundation『Apache Module mod_http2』(公開日不明、2026年11月7日閲覧)
更新記録
- 2026年5月10日:公開した。
- 2026年5月13日:JPCERT/CCのWeekly Report 2026-05-13号(出典13)を「悪用の状況」の注意喚起の文に加えた。
- 2026年5月15日:JPCERT/CCのWeekly Reportの5月15日の更新版(出典13)で、「出典」の行を改めた。
- 2026年5月26日:Exploit Databaseが掲載した第三者のDoSの実証コード(出典18)を「時系列」に加えた。
- 2026年7月15日:CVE記録の7月15日の更新版(出典10)で、「出典」の行を改めた。
- 2026年10月26日:NVDの10月26日の更新(出典11)で、CISAのKEVへの追加日が無いことをリードに加えた。
