Bitwarden CLIのnpmパッケージへの悪性コードの混入
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Bitwardenの声明によると、CLIのnpmパッケージ@bitwarden/cli@2026.4.0の配布経路で、悪性のパッケージが2026年4月22日17時57分〜19時30分(米東部時間)〔注1〕に短時間配布された[1]。Checkmarxのサプライチェーンのインシデントに関連して起きた[1]。Bitwardenは全面的なレビューを進めており、同種の攻撃を防ぐ緩和策を実施するとしている[1]。
経緯
The Hacker Newsは、Bitwardenが取材に侵害を認め、原因はnpmの配布の仕組みが侵害されたことだと説明したと報じた[14]。
改ざんされたパッケージの中身
JFrogの4月23日の解析では、2026.4.0のpreinstallとbwの実行ファイルの入口が、独自のローダーbw_setup.jsに差し替えられていた[8]。ローダーは、bunのランタイムが無ければGitHubから取得し、難読化された大きなJavaScriptのペイロード(bw1.js)を起動する[8]。ペイロードは、GitHubとnpmのトークン、SSHの資料、シェルの履歴、AWS・GCP・Azureの秘密情報、GitHub Actionsの秘密情報、AIツールの設定ファイルを狙う[8]。
JFrogは、主な持ち出し先をaudit[.]checkmarx[.]cxのエンドポイントとし、送信に失敗するとGitHubに切り替え、被害者のアカウントに新しいリポジトリを作って暗号化した結果を上げると説明した[8]。ペイロードには「Shai-Hulud: The Third Coming」というリポジトリの説明などDuneに因む命名があり、JFrogはShai-Hulud関連の活動と主題が重なる可能性があるとした[8]。正規の束の中に埋め込まれたメタデータは2026.3.0を指したままだった[8]。JFrogは、この食い違いが、悪性の包装の層は通常のビルドの流れで作られたものではなく、古い正規版の上に足されたことを強く示すと評価した[8]。
公開に使われた経路
StepSecurityは、Bitwardenの技術者のGitHubアカウントが侵害され、攻撃者がbitwarden/clientsのリポジトリに新しいブランチを作り、ビルド済みの悪性のtarballを置いたと説明した[9]。攻撃者はpublish-cli.ymlのワークフローを書き換え、GitHub ActionsのOIDCトークンをnpmのレジストリのAPIでnpmの認証トークンに交換して公開した[9]。公開の後、すべてのワークフローの実行、ブランチ、リリースのタグを削除した[9]。StepSecurityは、npmのOIDC Trusted Publishingを使って侵害されたパッケージが公開された、初めての確認されたサプライチェーン攻撃だと述べた[9]。
Endor Labsの4月23日の解析では、侵害されたCheckmarxのGitHub Actionsの1つ(checkmarx/ast-github-action)が、BitwardenのGitHubリポジトリで使われている[10]。Checkmarxは、ast-github-actionの悪性のタグを2.3.35とした[5]。その時間帯は4月22日14時17分〜15時41分(UTC)だった[5]。
攻撃者をめぐる報道
The Hacker Newsは、Checkmarxを狙った最新の攻撃の背後に、TeamPCPとして知られる脅威アクターがいると疑われていると報じた[14]。
SecurityWeekの記事によると、Socketは2つの事象の分析で、同じ埋め込みのペイロードの構造、認証情報の収集の方法、拡散の手口、ロシアのロケールでの停止を確認した[13]。SecurityWeekは、Socketが、共通の道具立ては同じマルウェアのエコシステムとのつながりを強く示すが、運用上の特徴の違いが帰属を複雑にしているとしたと報じた[13]。
時系列
| 日付 | 主体 | 内容 | 資料 |
|---|---|---|---|
| 2018年 | Bitwarden | CLIの公開を告知し、npm(@bitwarden/cli)、Chocolatey、Homebrew、Snapで入手できるとした | [17] |
| 2026年 | - | キャッシュされた認証情報で、悪性のKICSのDockerイメージ、更新版のVS Code拡張とDeveloper Assist拡張、GitHub Actionが公開された | [5] |
| 2026年 | JFrog | 乗っ取られた@bitwarden/cliの解析を公表した | [8] |
| 2026年 | Bitwarden | コミュニティフォーラムに声明を掲載し、公式Xにも投稿した | [1、4] |
| 2026年 | Bitwarden | 15時54分(UTC)に2026.4.1を公開した(npmの記録の公開者はGitHub Actions) | [6、11] |
| 2026年 | - | 日本時間の未明に2026.4.0がnpmから取り下げられた(unpublish) | [11] |
| 2026年 | CVE Program | CVEの記録を公開した | [7] |
| 2026年 | Checkmarx | Mandiantの支援を受けた調査の完了と封じ込めを告知した | [5] |
影響範囲
SecurityWeekは、@bitwarden/cliの月間のダウンロードが250,000を超えると報じた[13]。
Bitwardenの5月15日更新の声明では、問題はその時間帯のCLIのnpmの配布の仕組みに影響したもので、正規のCLIのコードベースや保存された保管庫のデータの完全性には影響していない[1]。調査ではこれまでのところ、利用者の保管庫のデータがアクセスされたり危険にさらされたりした証拠も、本番のデータや本番のシステムが侵害された証拠も見つかっていない[1]。社内環境、リリースの経路、関連するシステムのレビューを終え、今のところ他に影響を受けた製品や環境は見つかっていない[1]。
対応と現状
Bitwardenは声明で、問題を検知した後、侵害されたアクセスを無効にし、悪性のnpmのリリースを非推奨(deprecated)にしたと説明した[1]。修復の手順もすぐに始めた[1]。影響を受けた利用者には後始末の手順を示した[1]。
- npmで入れたCLI 2026.4.0の即時のアンインストール[1]
- npmのキャッシュの消去[1]
- 後始末の間の、念のためのnpmのinstallスクリプトの一時的な無効化[1]
- JFrogが示した追加の痕跡と後始末の手順の確認[1]
- 影響を受けた端末で露出した可能性があるか環境変数に保存された、APIトークンやSSH鍵などの秘密情報のローテーション[1]
- GitHubの活動、CIのワークフロー、関連する認証情報に、不正なアクセスや変更が無いかの確認[1]
- CLI 2026.4.1のインストール[1]
JFrogの解析によると、2026.4.0をインストールした場合は、その端末にあった開発者とクラウドの認証情報が侵害されたとみなす必要がある[8]。
Bitwardenの5月15日更新の声明では、この問題に関してCLI 2026.4.0にCVE-2026-42994が発行されている〔注2〕[1]。
未公表の事項
- Bitwardenのリリース経路への侵入の経路と、使われた認証情報
- 2026.4.0をダウンロードまたはインストールした利用者の数
- Bitwardenによる攻撃者の特定
- 窃取された認証情報による他のパッケージへの拡散の有無
- 全面的なレビューの結果
注
出典
当事者
- [1]Bitwarden, Inc.『Bitwarden Statement on Checkmarx Supply Chain Incident』(2026年4月23日公開、2026年5月15日更新)
- [2]Bitwarden, Inc.『Bitwarden Statement on Checkmarx Supply Chain Incident #9』(2026年4月23日公開)
- [3]Bitwarden, Inc.『Bitwarden Statement on Checkmarx Supply Chain Incident #16』(2026年4月23日公開)
- [4]Bitwarden, Inc.のXアカウント(@Bitwarden)『2026年4月23日の投稿』(2026年4月23日公開、保存記録のみ) 保存記録
関係組織
- [5]Checkmarx Ltd.『Update: Ongoing Checkmarx Supply Chain Security Incident』(2026年3月23日公開、2026年7月6日更新)
- [6]npm, Inc.『@bitwarden/cli』(2026年4月23日公開、2026年11月7日閲覧)
公的機関
- [7]CVE Program『CVE-2026-42994』(2026年5月1日公開)
調査・観測
- [8]JFrog Ltd.『TeamPCP Campaign Spreads to npm via a Hijacked Bitwarden CLI』(2026年4月23日公開)
- [9]StepSecurity, Inc.『Bitwarden CLI Hijacked on npm: Bun-Staged Credential Stealer Targets Developers, GitHub Actions, and AI Tools』(2026年4月23日公開)
- [10]Endor Labs, Inc.『Inside the Bitwarden Software Supply Chain Attack (Shai-Hulud)』(2026年4月23日公開、2026年9月11日更新)
- [11]GMO Flatt Security株式会社『Bitwarden ソフトウェアサプライチェーン攻撃の概要と対応指針』(2026年4月24日公開)
報道機関
- [13]Wired Business Media『Bitwarden NPM Package Hit in Supply Chain Attack』(2026年4月24日公開)
- [14]The Hacker News『Bitwarden CLI Compromised in Ongoing Checkmarx Supply Chain Campaign』(2026年4月23日公開)
- [15]nextmedia『Checkmarx-style supply chain attack hits password manager Bitwarden』(2026年4月24日公開)
背景資料
- [17]Bitwarden, Inc.『Bitwarden CLI tool released』(2018年5月23日公開)
更新記録
- 2026年4月26日:公開した。
- 2026年5月1日:CVE Programが公開したCVE-2026-42994の記録(出典7)を加え、「時系列」と「対応と現状」を改めた。
- 2026年5月15日:Bitwardenが5月15日に更新した声明(出典1)に合わせ、CVEの発行を「対応と現状」に、初期の声明との違いを「注」に加えた。
- 2026年7月6日:Checkmarxの7月6日の更新(出典5)で示された調査の完了と封じ込めを「時系列」に加えた。
- 2026年9月11日:Endor Labsの解析の9月11日の更新版(出典10)を「経緯」に加えた。
