Linuxカーネルの仮想マシン脱出の脆弱性CVE-2026-99999

カテゴリ
脆弱性の公表
目次
  1. 脆弱性の内容
  2. 時系列
  3. 対象の製品と版
    1. 事業者のサービス
  4. 悪用の状況
  5. 修正と回避策
  6. 未公表の事項
  7. 注
  8. 出典
  9. 更新記録

PWNAI Researchが公表したLinuxカーネルの脆弱性CVE-2026-99999(通称PwnEscape)は、仮想マシンのゲストから送った細工パケットで、ホストのカーネルメモリの漏えいや停止を起こせ、研究者の自前環境ではホストのroot権限での実行に至った⁠[13]。さくらインターネットは新規申し込みを一時停止し、さくらのVPSは2026年10月30日の追記でも一部を再開していない⁠[7]。

脆弱性の内容

AlmaLinuxのブログによると、PwnEscapeはKVMの欠陥ではなく、ホストのカーネルのIPv4ネットワーク処理にある⁠[2]。ゲストはvirtioネットワークデバイスを通じて、パケットとともにチェックサムを書き込む位置のメタデータをホストへ渡せる⁠[2]。ホストはこのメタデータをIPv4ヘッダーと照合せずに使っていた⁠[2]。Red Hatは、細工されたchecksum_startの値を持つパケットがIPv4に入ると、skb_checksum_help()が範囲外に書き込み、ネットワークヘッダーなどのカーネルメモリを壊すとした⁠[1]。

表1:CVE-2026-99999の概要
項目値資料
CVSS 3.1の基本スコア9.3(CVE.orgの記録)、8.8(Red Hat)〔注1〕⁠[1]
CWECWE-787(境界外書き込み)⁠[1]
攻撃者ローカルの攻撃者、または信頼できないゲスト仮想マシン⁠[1]
悪用されたときの影響ホストでの任意コード実行、サービス拒否、機密メモリの漏えい⁠[1]

PWNAI Researchの報告では、ゲストが制御するチェックサムのメタデータで、カーネルが検証した後のIPv4ヘッダーを書き換えられた⁠[13]。最初に確認した漏えいは、1回あたり32バイトだった⁠[13]。自前のLinux 6.12と7.xのホストでは、停止も確認した⁠[13]。

自前のKVM環境では、64バイトのホストカーネル書き込みを選んで実行できた⁠[13]。ホストのroot権限の補助プログラムを実行して印をゲストへ返す流れを、4回の完全な冷起動で完了した⁠[13]。ベンダーの本番環境でのroot権限のコマンド実行を主張するものではないとした⁠[13]。

Vercelのブログによると、100万ドルを懸けたSandboxのチャレンジの3日目に、PWNAI ResearchのPaulos Yibeloから最も重要な報告が届いた⁠[4]。microVM内から送った細工パケットで、ホストメモリの漏えい、ホストの停止、ホスト上のコード実行の3つの攻撃ができたとした⁠[4]。

メモリの漏えいは本番のVercel Sandboxで実証され、停止とコード実行は、Vercel Sandboxの構成に合わせた研究者自身のKVMとFirecrackerで実証された⁠[4]。2つのパケットでホストを停止させ、その上で動く全サンドボックスを止められた⁠[4]。顧客データへのアクセスを示す報告は無いとした⁠[4]。

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時系列

時系列
日付主体内容資料
2026年8月18日VercelSandboxの100万ドルのチャレンジを公表した⁠[13]
2026年9月4日PWNAI Researchカーネルのセキュリティ連絡先とネットワークのメンテナーへ非公開で報告した⁠[2]
2026年10月8日-修正がnet.gitに適用された⁠[13]
2026年10月14日-修正がメインラインに取り込まれた⁠[2、13]
2026年10月15日-CVE-2026-99999が公開された⁠[14]
2026年10月15日AWSセキュリティ情報2026-137-AWSを公開した⁠[3]
2026年10月16日AlmaLinux修正済みカーネルをテスト用リポジトリに出した⁠[2]
2026年10月23日AlmaLinux修正済みカーネルをAlmaLinux 8・9・10の本番リポジトリに入れた⁠[2]
2026年10月30日オランダNCSC勧告NCSC-2026-0461を公開した⁠[12]

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対象の製品と版

AWSのセキュリティ情報では、影響を受けるのは、未修正のLinuxカーネル4.4から6.18を使うKVMベースのハイパーバイザーで、virtio-netとKVMで仮想マシンを自己管理する利用者が対象になる〔注2〕⁠[3]。Amazon EC2、AWS Lambda、AWS Fargateは影響を受けないとした⁠[3]。NCSCは勧告で、適用対象にDebian、Oracle Linux、Rocky Linux、Red Hat Enterprise Linux、SUSEなどを挙げた⁠[12]。

表2:配布元の対応状況
配布元状態修正版・アドバイザリ資料
Red Hat追跡中の製品ストリームはすべて影響あり、担当チームが修正を対応中と記載Bugzilla 2553429⁠[1]
AlmaLinux 8本番リポジトリに修正版ありkernel-4.18.0-553.177.1.el8_10以上⁠[2]
AlmaLinux 9本番リポジトリに修正版ありkernel-5.14.0-687.59.1.el9_8以上⁠[2]
AlmaLinux 10本番リポジトリに修正版ありkernel-6.12.0-211.67.1.el10_2以上⁠[2]
Amazon Linux 2修正版ありkernel-4.14.355-287.750.amzn2(ALAS2-2026-3962)ほか⁠[3]
Amazon Linux 2023修正版ありkernel-6.1.188-233.385.amzn2023(ALAS2023-2026-3197)ほか⁠[3]

事業者のサービス

さくらインターネットは影響調査と必要な対応の対象を、さくらのクラウド、さくらのVPS、さくらのレンタルサーバ、高火力 DOK、高火力 VRTの5サービスとした⁠[5]。さくらの専用サーバ PHYなど、お客様がOSを管理するサービスは、OSやカーネルの版と構成により影響を受ける可能性があるとし、OSベンダーの情報の確認とセキュリティアップデートの適用を求めた⁠[5]。

表3:事業者ごとの新規申し込みの停止と再開
事業者対象停止再開資料
さくらのクラウド新規プロジェクトの作成告知に日付なし2026年10月20日⁠[6]
さくらのVPS新規申し込み、スケールアップ、お客様持ち込みのISOインストール、さくらのクラウドへのマイグレーション2026年10月16日石狩リージョンは2026年10月23日15時30分、大阪リージョンの一部は2026年10月30日13時40分⁠[7]
さくらのレンタルサーバ・マネージドサーバ新規申し込み2026年10月16日2026年10月22日10時30分⁠[8]
お名前.com VPS(KVM)全プランの新規申し込み2026年10月19日16時告知に再開の記載なし⁠[10]
KAGOYAKAGOYA CLOUD VPSなど5サービスの新規申し込み2026年10月19日18時2026年10月27日19時55分⁠[11]

さくらのVPSの告知によると、契約中のプランは通常どおり稼働している⁠[7]。お名前.comとKAGOYAも、利用中のサービスの停止や利用制限は無いとした⁠[10、11]。さくらインターネットは10月26日のまとめで、Linuxカーネルの脆弱性には必要な対応を行っており、お客様で実施いただく事項は無いと告知した⁠[9]。

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悪用の状況

KEVのactive-exploit caseとして、Red Hatはこの脆弱性を追跡している⁠[1]。PWNAI Researchは、弱い構成のエクスプロイトは数週間以内に、既定のハイパーバイザー構成で動くものは1か月以内に出てくると予想した⁠[13]。オランダのNCSCは、悪用の複雑さと主要ディストリビューションに入っている追加の対策から、大規模な悪用は起こりにくいとした⁠[12]。

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修正と回避策

AlmaLinuxは、研究者・上流・Red Hatのいずれも回避策を公表しておらず、修正はパッチ済みカーネルだと書いた〔注3〕⁠[2]。上流は修正を多層防御の措置と説明し、パケットの検証をより完全にする作業が続いている⁠[2]。AWSも回避策は無いとし、ホストへ更新したカーネルパッケージを適用して再起動するよう勧めた⁠[3]。

Red Hatの緩和策は、QEMUのモニターでvirtio-netデバイスを外し、csum=offを付けて追加し直す手順である⁠[1]。

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未公表の事項

  • さくらのVPSの東京リージョンの新規申し込みの再開時期(さくらインターネットは、東京・大阪リージョンの再開時期は未定と告知した⁠[7])
  • お名前.com VPS(KVM)の新規申し込みの再開時期(お名前.comは、再開の際にページで知らせるとした⁠[10])
  • 実環境での悪用の有無
  • ホストを制御するまでの攻撃の詳細(PWNAI Researchは、第2部で書くとした⁠[13])

注

  • 〔注1〕CVE.orgの記録は9.3(PR:N)、Red Hatは8.8(PR:L)で、必要な権限の指標が異なる⁠[1]。
  • 〔注2〕AWSは未修正の4.4から6.18とし⁠[3]、AlmaLinuxは約18年前の2.6.27由来のコードを含むとした⁠[2]。
  • 〔注3〕AlmaLinuxは回避策の公表は無いと書いたが⁠[2]、Red Hatのページには緩和策の記載がある⁠[1]。

出典

当事者

関係組織

公的機関

調査・観測

更新記録

  • 2026年11月5日:公開した。

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