Parallels Desktopの権限昇格の脆弱性CVE-2026-90894
JFrogが2026年9月14日に公開したCVE記録によると、Parallels Desktopがrootで動かすprl_disp_serviceを通じて、管理者でないローカルの利用者がrootでプログラムを実行できる脆弱性CVE-2026-90894がある[8]。Parallelsは10月20日に更新したセキュリティ更新の一覧で、27.0.0 (58628) と26.5.0 (57613) を修正版としている[2]。
脆弱性の内容
| 項目 | 値 | 資料 |
|---|---|---|
| CVSS v3.1 | 7.8(HIGH。CNAのJFrogの評価) | [8] |
| ベクトル | AV:L/AC:L/PR:L/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H | [8] |
| CWE | CWE-88(引数の注入)、CWE-78(OSコマンドの注入)、CWE-269(不適切な権限管理) | [8] |
| 悪用されたときの影響 | 非特権のローカル利用者がprl_disp_serviceを通じてrootでコードを実行する | [11] |
サービスと展開の処理
CVE記録の説明では、ローカルのクライアントは誰でも書き込めるソケット/var/run/prl_disp_service.socketでprl_disp_serviceに接続できる[8]。PrlSrv_LoginLocalはピアの資格情報を受け入れ、Parallelsの署名も管理者グループも求めない[8]。
ログインした利用者は、PrlSrv_InstallApplianceでアプライアンスを置くフォルダ(sVmParentPath)を選べる[8]。サービスは展開のコマンドを1つの文字列で組み、QtのQProcessのsplitCommandがそれを語に分けるため、フォルダ名に入れた引用符の後ろの文字列がtarのオプションになる[8]。macOSのtarの--use-compress-program=は、指定したプログラムをrootで実行する[8]。
JFrogは9月15日のブログで、この脆弱性をParaShellsと呼んだ[11]。prl_disp_serviceはParallels Desktopの特権のホストデーモンで、GUI、CLIのツール、Virtualization SDKがこのデーモンとUnixドメインソケットで通信する[11]。JFrogは、シェルのコマンドの注入ではなくtarへの引数の注入だと説明した[11]。ホスト側だけで成立し、ゲストからホストへの過去のToolgateの不具合とは攻撃面が別である[11]。
攻撃の前提と影響
JFrogのブログでは、成立の前提はParallels Desktop for Macの導入、rootのヘルパーprl_disp_serviceの稼働とソケットの存在、標的のmacOSの低権限のローカル利用者の3つで、仮想マシンが動いている必要は無い[11]。JFrogが想定した攻撃は、悪意のあるパッケージや侵害されたCIのジョブなど非特権のプロセスがすでに動くMacで、アプライアンスのインストールの要求1回で攻撃者のコードがrootで動くものである[11]。
rootを得た攻撃者は、システムのソフトウェアを置き換え、他の利用者のデータを読み、launchdで居座れるとJFrogは書いた[11]。影響の大きい環境には、Parallels Desktopの入った開発者のノートPC(悪意のあるHomebrewのformulaや汚染されたnpmのpreinstallを例示)と、ローカルアカウントの多い共有の実習・研修用のMacを挙げた[11]。
時系列
| 日付 | 主体 | 内容 | 資料 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | Parallels | 26.4.0 (57513) を公開した | [5] |
| 2026年 | JFrog | 26.4.0 (57513) のarm64版で、管理者でない利用者からrootに至る連鎖を確かめた | [11] |
| 2026年 | JFrog | Parallelsに開示した | [11] |
| 2026年 | Parallels | 27.0.0 (58628) を公開した〔注1〕 | [1、2] |
| 2026年 | CVE Program、JFrog | CVE-2026-90894の記録と、JFrogのアドバイザリを公開した | [8、10] |
| 2026年 | JFrog | 技術の解説のブログを公開した | [11] |
| 2026年 | Parallels | 26.5.0 (57613) を公開した | [5] |
| 2026年 | Parallels | セキュリティ更新の一覧のページを更新した | [2] |
対象の製品と版
CVE記録は、影響を受ける版を26.4.0、影響を受けない版を27.0.0とし、それ以外の版の状態を不明(unknown)とした[8]。JFrogのアドバイザリは、27.0.0より前の版を影響を受ける版とした[10]。JFrogはブログで、古いビルドすべての回帰試験はしておらず、同じ展開のテンプレートと誰でも書き込めるソケットを持つ導入を対象とみなすよう求めた[11]。App Store Editionは、サービスの起動の仕方が違う可能性もあると書いた[11]。
Parallelsの6月15日の沿革の記事では、Parallels Desktopの利用者は世界で数百万人である[16]。
悪用の状況
CVE記録によると、JFrogは26.4.0でrootを得る非公開の実証コード(PoC)を持ち、同じPoCは27.0.1ではrootを得られない[8]。公開の悪用の詳細は、記録に含めていない[8]。Help Net Securityは、JFrogが技術の詳細を公開した一方で、開発したワンライナーのPoCスクリプトは公開しなかったと報じた[14]。
CVE記録に付いたCISA ADPのSSVCは、悪用(Exploitation)をnone、自動化(Automatable)をno、技術的影響(Technical Impact)をtotalとした[8]。NVDの記録は分析待ち(Awaiting Analysis)の状態で、CISAの既知の悪用の項目を持たない[9]。The Hacker Newsは9月16日の記事で、JFrogはこの脆弱性を使った攻撃を報告していないと報じた[13]。
Elasticの検出規則は、prl_disp_serviceが固定の展開のコマンドより多い引数でtarかbsdtarを起動したことを捉えるもので、深刻度はhigh、リスクスコアは73である[12]。規則は対象を、Parallels Desktop 27.0.0未満のCVE-2026-90894としている[12]。
修正と回避策
JFrogのアドバイザリによると、27.0.0はtarを固定の引数リストで起動するため、同じ引用符はフォルダ名のままで、コードを実行しない[10]。9月14日のアドバイザリは、26.4.2を含む26.x系にとどまるホストには、この展開の変更が入っていないとした[10]。CVE記録は、対策を27.0.0以降への更新とした[8]。
Parallelsは、修正を一般に公開するまで脆弱性を開示も確認も議論もしないとしている[2]。The Hacker Newsは9月16日の記事で、Parallelsはこの脆弱性について何も公表しておらず、セキュリティ修正の一覧は2025年5月以来見直されておらず今回の脆弱性を含まないと報じた[13]。27.0.0のリリースノートは、仮想ネットワーク、仮想GPUのコマンド処理、VirtIOの複数の脆弱性(権限昇格の経路を含む)に対応したと書く[1]。26.5.0のリリースノートは、全体の安定性とセキュリティの問題に対応する更新だと書く[5]。
Parallelsの8月25日の案内では、26はIntel Macを完全にサポートし続け、27からはApple siliconが必要になる[7]。Intel Macの利用者は26を使い続け、今後のセキュリティと保守の更新を見込めるとした[7]。
JFrogのアドバイザリは、すべてのホストが27.0.0以降になるまで、該当するMacのローカルログインを制限するよう求めた[10]。脆弱な導入では、どのローカルアカウントもディスパッチャのソケットに届く[10]。JFrogのブログが挙げた対策は、Parallels Desktopの入ったMacの棚卸し、ローカルでログインできる利用者の制限、修正版への更新である[11]。
未公表の事項
- 26.4.1・26.4.2と、26.4.0より前の版での試験の結果
- Parallelsによる原因と経路の技術的な説明
- App Store Editionへの影響についてのParallelsの説明
- 修正版の導入で、攻撃者がすでに得たアクセスが除かれるか
注
出典
当事者
- [1]Parallels International GmbH『Parallels Desktop 27 updates summary』(公開日不明、2026年11月7日閲覧、2026年10月29日更新)
- [2]Parallels International GmbH『Parallels Desktop Security Updates』(公開日不明、2026年11月7日閲覧、2026年10月20日更新)
- [5]Parallels International GmbH『Parallels Desktop 26 updates summary』(公開日不明、2026年11月7日閲覧、2026年10月13日更新)
- [7]Parallels International GmbH『Parallels Desktop compatibility with Intel-based Mac computers』(2026年8月25日公開)
公的機関
- [8]CVE Program『CVE-2026-90894 Parallels Desktop local privilege escalation via appliance extract argument injection』(2026年9月14日公開、2026年9月15日更新)
- [9]National Institute of Standards and Technology『CVE-2026-90894』(2026年9月14日公開、2026年9月18日更新)
調査・観測
- [10]JFrog Ltd.『Parallels Desktop is vulnerable to a Local Privilege Escalation via Appliance Extract Argument Injection』(2026年9月14日公開、2026年9月15日更新)
- [11]JFrog Ltd.『ParaShells: Parallels Desktop Turns Appliance Install Into a Root Shell』(2026年9月15日公開、2026年9月16日更新)
- [12]Elasticsearch B.V.『Privilege Escalation via Parallels Appliance Extract Argument Injection』(公開日不明、2026年11月7日閲覧)
報道機関
- [13]The Hacker News『Parallels Desktop Flaw Lets Non-Admin Mac Users Gain Root, but Intel Macs Can't Install Fix』(2026年9月16日公開)
- [14]Help Net Security『Parallels Desktop flaw hands any local user root on a Mac (CVE-2026-90894)』(2026年9月16日公開)
背景資料
- [16]Parallels International GmbH『20 Years of Parallels Desktop』(2026年6月15日公開)
更新記録
- 2026年9月18日:公開した。
- 2026年10月13日:Parallels International GmbHの26のリリースノート(出典5)の10月13日の更新で示された26.5.0の公開を「時系列」と「修正と回避策」に加えた。
- 2026年10月20日:Parallels International GmbHのセキュリティ更新の一覧(出典2)の10月20日の更新で示された修正版をリードに、その更新を「時系列」に加えた。
- 2026年10月29日:Parallels International GmbHの27のリリースノート(出典1)の10月29日の更新を加え、27.0.0の対応の記述を「修正と回避策」に改めた。
