BitLockerのセキュリティ機能バイパスの脆弱性YellowKey

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目次
  1. 脆弱性の内容
    1. 公開の経緯とMicrosoftの見解
  2. 時系列
  3. 対象の製品と版
  4. 悪用の状況
  5. 修正と回避策
    1. 説明の食い違い
  6. 未公表の事項
  7. 注
  8. 出典
  9. 更新記録
  10. 関連記事

Microsoftの2026年5月19日の勧告によると、Windows BitLockerの「YellowKey」と呼ばれるセキュリティ機能バイパスの脆弱性CVE-2026-45585により、標的に物理的にアクセスできる攻撃者が暗号化されたデータにアクセスしうる⁠[1]。概念実証は、協調的な脆弱性開示のベストプラクティスに反して公開された⁠[1]。修正は6月9日の月例のセキュリティ更新に含まれる⁠[1、2]。

脆弱性の内容

表1:脆弱性の評価
項目値資料
CVSS 3.1(Microsoft)基本値6.8、現状値6.3(AV:P/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H)⁠[1]
深刻度(Microsoft)Important(影響の種別はSecurity Feature Bypass)⁠[1]
深刻度(CVE記録)MEDIUM⁠[7]
CWECWE-77(コマンドインジェクション)⁠[1]
悪用されたときの影響システムの記憶装置のBitLocker Device Encryptionの回避⁠[1]
SSVC(CISAのADP)Exploitation「poc」、Automatable「no」、Technical Impact「total」⁠[7]

Microsoftは勧告で、Windows BitLockerのコマンドに使う特殊要素の無害化が不適切なため、権限の無い攻撃者が物理的な攻撃でセキュリティ機能を回避しうると説明した⁠[1]。MicrosoftはBitLockerの対策の文書で、TPMのみの構成は利用者の操作なしにドライブのロックを解除すると説明している⁠[30]。TPMとPINの構成では、PINを入力しないと暗号化されたボリュームのデータにアクセスできない⁠[30]。

Eclypsiumの5月20日の報告では、手口に、接続した記憶装置のSystem Volume Information\FsTxディレクトリが使われる⁠[13]。回復のための起動では、Windowsがそこにあるトランザクションログ(NTFS)を再生する⁠[13]。ログがwinpeshl.iniを削除するので、回復環境は制限された回復の画面の代わりにcmd.exeを起動する⁠[13]。シェルが出るときには、OSのボリュームはTPMによって透過的に復号されている⁠[13]。

Eclypsiumは、攻撃側の媒体のファイルシステムはNTFS・FAT32・exFATのいずれでもよいとし、研究者が同じ結果に至る3つの経路を示したと書いた⁠[13]。

  • USBメモリを使う⁠[13]
  • 対象の内蔵ディスクのEFIシステムパーティションに書き込む⁠[13]
  • 記憶装置を取り外して別の機器でEFIパーティションに書き込み、元に戻す⁠[13]

研究者の5月14日の投稿では、YellowKeyの原因は、ボリュームのトランザクションファイルを処理するバイナリ「autofstx.exe」である⁠[11]。研究者は前日の投稿で、真の根本原因はまだ一般に知られていないとも書いていた⁠[10]。SecurityWeekは、研究者が問題のコンポーネントはWinREのイメージの中にしか無いとして、バックドアの疑いを述べたと報じた⁠[16]。通常のWindowsにある同じ名前のコンポーネントには、BitLockerを回避させる機能が無いという主張である⁠[16]。

SecurityWeekは5月20日、Will Dormannが、緩和策はWinREのイメージの起動時にFsTx Auto Recovery Utility(autofstx.exe)が自動で動くのを防ぐものだと説明したと報じた⁠[17]。Dormannは、あるボリュームのFsTxディレクトリが再生時に別のボリュームの内容を変えられること自体が、脆弱性に思えるとも述べた⁠[17]。

The Hacker Newsによると、LevelBlueは5月22日の分析で、YellowKeyは短時間の物理的なアクセスだけで成立し、持続するハードウェアの痕跡を残さないとした⁠[20]。

オランダのNCSC-NLは告知で、脆弱性は暗号そのものではなくBitLockerを取り巻く回復環境にあり、悪用を示すPoCがあると説明した⁠[6]。告知の優先度は「Normaal」だった⁠[6]。

公開の経緯とMicrosoftの見解

SecurityWeekによると、PoCを公開したのはChaotic EclipseやNightmare Eclipseの名で知られる研究者だった⁠[16]。

MSRCは5月27日のブログで、RedSun・UnDefend・BlueHammer・YellowKey・GreenPlasma・MiniPlasmaは責任ある形で開示されなかったと述べた⁠[4]。詳細は公開前にMicrosoftと共有されなかった⁠[4]。未修正の脆弱性のPoCを悪意ある者の手に渡す調整外の開示は、決して正当化できないとした⁠[4]。Digital Crimes Unitが、こうした者とその犯罪行為を助ける者への訴えを続けるとも書いた⁠[4]。

The Recordの6月1日の記事によると、MicrosoftはSNSの声明で、セキュリティ研究を行い公開する個人に法的措置をとる意図は無いとした⁠[23]。研究者とのやり取りの一部が不十分だったことも認めた⁠[23]。

Eclypsiumは5月27日の追記で、YellowKeyの元の研究を掲載していたアカウントを、MicrosoftのGitHubとGitLabが削除したと書いた⁠[13]。The Recordは5月29日、研究者のGitHubのアカウントが削除され、Bloggerのページも記事の公開のときには閉じているようだと報じた⁠[22]。

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時系列

時系列
日付主体内容資料
2026年5月12日Nightmare Eclipse今回は2件の脆弱性だとして、YellowKeyとGreenPlasmaのGitHubのリンクをブログに載せた〔注1〕⁠[9]
2026年5月12日MicrosoftCNAとしてCVE-2026-45585を予約した⁠[7]
2026年5月13日Nightmare EclipseTPMとPINの構成についての投稿を出した⁠[10]
2026年5月15日Microsoft主張の妥当性と適用範囲を調べており、協調的な脆弱性開示を支持するとSecurityWeekに答えた⁠[16]
2026年5月19日Microsoft勧告を公開し、緩和策を示した⁠[1]
2026年5月20日Microsoft勧告の1つ目の緩和策のStep 2を改めた(版1.1)⁠[1]
2026年5月20日NCSC-NL告知NCSC-2026-0165を出した⁠[6]
2026年5月21日Microsoft緩和策を実施するスクリプトを加えて手動の緩和策を削り、スクリプトを言語に依存しない形に改めた(版1.2〜1.4)⁠[1]
2026年6月9日Microsoft勧告に6月の月例のセキュリティ更新へのリンクを加え(版2.0)、製品情報を改めた(版2.1)⁠[1]
2026年6月9日Nightmare EclipseTPMとPINの構成での手法を説明する投稿を出した⁠[12]

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対象の製品と版

表2:対象の製品と修正版
製品影響を受ける版修正版資料
Windows 11Version 24H2(x64)KB5094126(10.0.26100.8655)⁠[1]
Windows 11Version 25H2(x64)KB5094126(10.0.26200.8655)⁠[1]
Windows 11version 26H1(x64)KB5095051(10.0.28000.2269)⁠[1]
Windows Server 2025-KB5094125(10.0.26100.32995)⁠[1]
Windows Server 2025Server Core installationKB5094125(10.0.26100.32995)⁠[1]

Eclypsiumの報告では、手法は研究者が試したすべてのWindows 11のビルドとWindows Server 2022・2025で成立し、Windows 10は影響を受けないと報告されている〔注2〕⁠[13]。@ITも、研究者がWindows 10では手法が成立しなかったとしたと報じた⁠[19]。

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悪用の状況

Microsoftは勧告の最新の版で、一般への公開を「Yes」、悪用を「No」とし、悪用可能性を「Exploitation More Likely」と評価した⁠[1]。

日本マイクロソフトのJapan Security Teamの6月の月例の記事では、更新の公開より前に悪用または詳細の一般公開を確認した脆弱性の一覧に、この脆弱性が入っている⁠[3]。NVDの記録には、CISAのKEVへの追加日(cisaExploitAdd)の値が無い⁠[8]。

Eclypsiumは、Kevin BeaumontとWill Dormannを含む独立の研究者が、PoCが説明どおりに動くことを公に確かめたと書いた⁠[13]。SecurityWeekは、Beaumont、KevTheHermit、Dormannらが試し、最近のWindows 11のビルドでも動くことを確かめたと報じた⁠[16]。

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修正と回避策

Microsoftは勧告で、端末やデータが侵害・盗難されるおそれを懸念する場合は、緩和策の実施を検討するよう勧めた⁠[1]。例として、従業員が業務端末を自宅や出張に持ち出す場合を挙げた⁠[1]。版2.0では、6月のWindowsのセキュリティ更新をできるだけ早くインストールするよう勧めた⁠[1]。The Hacker Newsは、Microsoftが暗号化前の端末について、Microsoft Intuneかグループポリシーで「Require additional authentication at startup」を有効にし、「Configure TPM startup PIN」を「Require startup PIN with TPM」にするよう勧めたと報じた⁠[20]。

勧告のFAQによると、手動の緩和策〔注3〕に代わったスクリプトは、悪用の危険を下げる暫定のセキュリティ修正である⁠[1]。WinREのBootExecuteレジストリ値からautofstx.exeを取り除き、そのエントリが無ければ変更せずに終了する⁠[1]。WinREのイメージをマウントし、オフラインのSYSTEMレジストリを編集してエントリがあれば取り除き、変更をコミットしてWinREを再封印するので、BitLockerの信頼は保たれる⁠[1]。BootExecuteは回復モードでも起動のごく初期にプログラムを実行するため、エントリを除くと、高い権限の環境でその実行ファイルが動かなくなる⁠[1]。

Windows message centerの6月10日の項目では、Windows 11 25H2の更新がこの脆弱性の解決を含み、緩和スクリプトはガイダンスの一部として残る⁠[2]。Microsoftは勧告で、緩和策はサービスの可用性や管理運用に影響しないとした⁠[1]。セキュリティ更新を入れた後も、緩和策の変更を戻す必要はない⁠[1、2]。

ASUSはサポートのFAQで、特定の条件でこの脆弱性がBitLockerの保護の仕組みの一部を回避しうると説明した⁠[5]。Microsoftの更新が出るまでは、TPM + PINの二要素の認証を有効にするよう勧めた⁠[5]。

Eclypsiumの報告では、WinREを無効にすると攻撃は成立しなくなる(いくつかの留保がある)が、F11の起動メニューや「Reset this PC」、更新に失敗した後の自動修復などの回復機能も失われる⁠[13]。研究者は5月14日の投稿で、このバイナリがWindows UpdateのWinREのイメージにもあると別の研究者から聞いたと書き、その場合はWinREの無効化が解決策にならないとした⁠[11]。

説明の食い違い

Microsoftは勧告で、TPM+PINを使っていればこの脆弱性は悪用できないとした⁠[1]。研究者は、TPM+PINでも悪用でき、そのPoCは公開しないと書いた⁠[10]。

研究者の6月の投稿によると、手法はWinREで実行ファイルを動かして作った特殊なトランザクションファイルを、回復パーティションに置くものである⁠[12]。被害者がPINを入れた後にWinREに入らせると、ファイルが回復され、BitLockerで保護されたボリューム内の任意のファイルが上書きされるとした⁠[12]。自身もBitLockerを使っているため、このPoCは公開しなかったとも書いた⁠[12]。

Eclypsiumは、公開されたコードは既定のTPMのみの構成だけを破り、TPM+PINの構成は公開されたコードでは悪用できないと説明した⁠[13]。SecurityWeekは、JaGoTuなどPoCを試した研究者が、TPMとPINの構成での攻撃の成否はWinREの実装に左右されるようだとしたと報じた⁠[16]。

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未公表の事項

  • 根本原因についてのMicrosoftの詳しい説明
  • 影響を受ける端末の数
  • Windows Server 2022を対象製品に含めない理由(Microsoft)
  • TPMとPINの構成での手法の第三者による検証

注

  • 〔注1〕@ITは、研究者が情報を公開したのを5月13日(米国時間)と報じた⁠[19]。
  • 〔注2〕Windows Server 2022は、Microsoftの勧告の対象製品の表に無い⁠[1]。
  • 〔注3〕勧告の版1.0は、WinREのイメージのマウントからBitLockerの信頼の再設定までの6手順の手動の緩和策を示していた⁠[20]。

出典

当事者

関係組織

公的機関

調査・観測

報道機関

背景資料

更新記録

  • 2026年5月15日:公開した。
  • 2026年5月19日:Microsoftの勧告(出典1)とCVE記録(出典7)を加え、リードを勧告の説明に改め、評価の表と修正と回避策の節を加えた。
  • 2026年5月20日:勧告の版1.1(出典1)、NCSC-NLの告知(出典6)、NVDの記録(出典8)、Eclypsiumの報告(出典13)、SecurityWeekの記事(出典17)、The Hacker Newsの記事(出典20)を加え、脆弱性の内容、対象の製品と版、悪用の状況の節を改めた。
  • 2026年5月21日:勧告の版1.2〜1.4(出典1)で加わった緩和のスクリプトを修正と回避策の節に加え、版1.0の手動の緩和策を注に移した。
  • 2026年5月27日:MSRCのブログ(出典4)とEclypsiumの5月27日の追記(出典13)を加え、公開の経緯とMicrosoftの見解の小節を立てた。
  • 2026年5月29日:The Recordの5月29日の記事(出典22)を加え、公開の経緯とMicrosoftの見解の小節を改めた。
  • 2026年6月1日:The Recordの6月1日の記事(出典23)で伝えられたMicrosoftの声明を、公開の経緯とMicrosoftの見解の小節に加えた。
  • 2026年6月9日:勧告の版2.0・2.1(出典1)、日本マイクロソフトの6月の月例の記事(出典3)、ASUSのFAQ(出典5)、研究者の6月9日の投稿(出典12)を加え、リード、対象の製品と版、悪用の状況、修正と回避策の節を改めた。
  • 2026年6月10日:Windows message centerの6月10日の項目(出典2)を加え、リードと修正と回避策の節を改めた。
  • 2026年6月25日:Eclypsiumの報告の6月25日の追記(出典13)に合わせ、悪用の状況の節を改めた。
  • 2026年7月24日:NVDの記録の7月24日の更新版(出典8)に合わせ、悪用の状況の節を改めた。
  • 2026年7月28日:Eclypsiumの報告の7月28日の更新版(出典13)に合わせ、脆弱性の内容と修正と回避策の節を改めた。
  • 2026年8月10日:CVE記録の8月10日の更新版(出典7)に合わせ、脆弱性の内容の評価の表を改めた。

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