PAN-OSのTerminal Server Agentのバッファオーバーフロー
Palo Alto Networksの2026年7月8日〔注1〕のアドバイザリによると、PAN-OSのUser-ID Terminal Server Agent(TSA)の構成要素に複数のバッファオーバーフローの脆弱性があり、ネットワークにアクセスできる認証されていない攻撃者が、細工したネットワークトラフィックを送ってサービス拒否を起こすか、任意のコードを実行しうる[1]。同社は、悪意ある悪用を把握していないとした[1]。
脆弱性の内容
| 項目 | 値 | 資料 |
|---|---|---|
| アドバイザリの評価(Palo Alto Networks) | Urgency HIGHEST、Severity 7.2(HIGH)、Exploit Maturity UNREPORTED | [1] |
| CVSS v4.0(Palo Alto Networks、TSAのIPとポートをインターネットや信頼できないネットワークから使える設定) | HIGH(CVSS-BT 7.2 / CVSS-B 9.2) | [1] |
| CVSS v4.0(Palo Alto Networks、TSAのIPとポートを信頼できる内部のIPアドレスに限った設定) | MEDIUM(CVSS-BT 5.2 / CVSS-B 7.7) | [1] |
| CVSS v4.0(Palo Alto Networks、Prisma Access) | MEDIUM(CVSS-BT 4.8 / CVSS-B 7.5) | [1] |
| CVSS v3.1(Siemens) | 10.0 | [2] |
| CVSS v4.0(Siemens) | 9.2 | [2] |
| CVSS v3.1(CERT Santé) | 9.8 | [8] |
| CWE | CWE-787(範囲外への書き込み)、CAPEC-100(バッファのオーバーフロー) | [1] |
Palo Alto Networksの製品文書では、TSAは、複数の利用者が同じIPアドレスを共有するシステムで利用者ごとにポートの範囲を割り当てて個々の利用者を識別し、割り当てを接続したファイアウォールに知らせる[5]。ファイアウォールとの通信に使うポートの既定値は5009である[5]。
Palo Alto Networksは、脆弱性は外部から見つかったとし、発見して報告した研究者に謝意を示した[1]。Prisma Accessは認証済みの利用者を要し、TSAのIPとポートへの外部ネットワークからのアクセスが制限されているため、悪用のリスクは低いとした[1]。
SecurityWeekの7月9日の記事では、Palo Alto Networksが水曜日に、自社製品の13件の脆弱性のアドバイザリを公表した[9]。同じ記事は、Prismaブラウザに使うChromiumの500件を超える脆弱性も対象で、新たに修正した脆弱性のうち最も深刻なのはCVE-2026-0288だと報じた[9]。
時系列
| 日付 | 主体 | 内容 | 資料 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | - | CVE-2026-0288が予約された(割当元はpalo_alto) | [3] |
| 2026年 | Palo Alto Networks | アドバイザリを公開し、修正版を示した | [1] |
| 2026年 | NVD | CVE-2026-0288の記録を公開した | [4] |
| 2026年 | CISA | CVE記録にSSVCの評価(Exploitation none、Automatable no、Technical Impact total)を加えた | [3] |
| 2026年 | 日立ソリューションズ | 国内の顧客に案内を出し、該当する顧客にPAN-OSの更新の検討を求めた | [7] |
| 2026年 | CERT Santé | アラートを公開した | [8] |
| 2026年 | Siemens | 告知SSA-104023の1.1版でCVE-2026-0288を加えた | [2] |
| 2026年 | Siemens | CVE記録にSSA-104023への参照を加えた | [3] |
対象の製品と版
Palo Alto Networksのアドバイザリでは、影響を受けるのはTSAの項目を1つ以上設定したPAN-OSの機器だけである[1]。設定の有無は管理画面のDevice > User Identification > Terminal Server Agentsで確かめられ、Panoramaは影響を受けない[1]。
| 製品 | 影響を受ける版 | 修正版 | 資料 |
|---|---|---|---|
| PAN-OS 12.1 | 右の修正版より前の版 | 12.1.4-h8、12.1.7-h2、12.1.8 | [1] |
| PAN-OS 11.2 | 右の修正版より前の版 | 11.2.4-h20、11.2.7-h18、11.2.10-h12、11.2.13 | [1] |
| PAN-OS 11.1 | 右の修正版より前の版 | 11.1.4-h35、11.1.6-h35、11.1.7-h8、11.1.10-h30、11.1.13-h9、11.1.16 | [1] |
| PAN-OS 10.2 | 右の修正版より前の版 | 10.2.7-h36、10.2.10-h39、10.2.13-h23、10.2.16-h9、10.2.18-h8 | [1] |
| Prisma Access 11.2 | 11.2.7-h18より前の版 | 11.2.7-h18 | [1] |
| Prisma Access 10.2 | 10.2.10-h39より前の版 | 10.2.10-h39 | [1] |
| Cloud NGFW(AWS・Azure) | なし(Palo Alto Networksから連絡を受けた場合を除く) | 対応不要 | [1] |
| RUGGEDCOM APE1808(Palo Alto Networks Virtual NGFWを載せたもの) | 全版 | 顧客サポートに連絡して修正と更新の情報を受ける | [2] |
悪用の状況
CERT Santéはアラートで、この脆弱性は悪用されておらず、修正と回避策があると示した[8]。公開の情報源で入手できる概念実証(PoC)は、今のところ無いとも書いた[8]。
修正と回避策
Palo Alto Networksは、版の系列ごとに更新先の修正版を示し、サポートの終わった古い版にはサポート中の修正版への更新を求めた[1]。まだであれば、推奨の導入指針どおりTSAの接続を信頼できる内部のIPアドレスに限るよう強く推奨した[1]。大多数のファイアウォールは既に同社と業界の推奨に従っているとも書いた[1]。
Palo Alto NetworksのPAN-OS 12.1.7-h2のリリースノートでは、この版で修正したCVEの一覧にCVE-2026-0288が含まれる[6]。
Prisma Accessにとっては深刻度が中程度の脆弱性で、Palo Alto Networksは次回の定期保守の周期で全顧客を更新するとした[1]。周期より前の更新を望む顧客には、サポートに連絡して随時の更新の時間枠を設けるよう案内した[1]。
Siemensの告知では、顧客にPalo Alto Networksの上流の告知にある回避策を確かめて実施するよう勧めている[2]。日立ソリューションズのPalo Alto Networks製品ユーザサポートは、影響を受けるのはTSAが有効になっているPAシリーズ(VMシリーズを含む)だけとした[7]。設定画面でEnabledにチェックがあるかで確かめるよう案内した[7]。
未公表の事項
- 脆弱性の数と、個々のオーバーフローの箇所などの技術的な詳細
- TSAをインターネットから使える状態にしていた機器の台数
- Prisma Accessの更新を終える「次回の定期保守」の日付
- Siemensが案内するRUGGEDCOM APE1808の修正版の版と提供時期
注
- 〔注1〕CVE記録の公表日時(datePublic)は7月8日16時(UTC)である[3]。
出典
当事者
- [1]Palo Alto Networks, Inc.『CVE-2026-0288 PAN-OS: Buffer Overflow Vulnerabilities in User-ID Terminal Server Agent』(2026年7月8日公開)
- [6]Palo Alto Networks, Inc.『PAN-OS 12.1.7-h2 Addressed Issues』(公開日不明、2026年11月4日閲覧、2026年10月28日更新)
関係組織
- [2]Siemens AG『SSA-104023: Multiple Vulnerabilities in Palo Alto Networks PAN-OS on RUGGEDCOM APE1808 Devices』(2026年7月14日公開、2026年10月13日更新)
- [7]株式会社日立ソリューションズ『Terminal Server Agentにおけるバッファオーバーフローの脆弱性 (CVE-2026-0288)について』(2026年7月10日公開、PDF)
公的機関
- [3]MITRE Corporation『PAN-OS: Buffer Overflow Vulnerabilities in User-ID Terminal Server Agent』(2026年7月8日公開、2026年10月15日更新)
- [4]National Institute of Standards and Technology『CVE-2026-0288 Detail』(2026年7月8日公開、2026年8月11日更新)
- [8]Agence du Numérique en Santé『Palo Alto Networks - CVE-2026-0288』(2026年7月10日公開)
報道機関
- [9]Wired Business Media『Palo Alto Networks Patches 13 Vulnerabilities』(2026年7月9日公開)
背景資料
- [5]Palo Alto Networks, Inc.『Device > User Identification > Terminal Server Agents』(公開日不明、2026年11月4日閲覧、2026年6月25日更新)
更新記録
- 2026年7月11日:公開した。
- 2026年8月11日:Siemensの告知SSA-104023の1.1版(出典2)を加え、評価を「脆弱性の内容」に、RUGGEDCOM APE1808の行を「対象の製品と版」に、回避策の勧めを「修正と回避策」に加え、NVDの記録(出典4)の出典行を8月11日の更新版に改めた。
- 2026年10月13日:Siemensの告知の1.2版(出典2)に合わせ、出典の節の更新日を改めた。
- 2026年10月15日:CVE記録(出典3)の10月15日の更新で加わったSiemensの告知への参照を「時系列」に加えた。
- 2026年10月28日:Palo Alto NetworksのPAN-OS 12.1.7-h2のリリースノート(出典6、10月28日更新)を「修正と回避策」に加えた。
