Yandexのデータセンターの無人機攻撃による停止

カテゴリ
システム停止
目次
  1. 経緯
    1. ウクライナ側の発言と主張
    2. 同じ時期の別の障害
  2. 時系列
  3. 影響範囲
    1. 計算資源の作成とクォータ
    2. 決済・メール・広告のサービス
    3. 他の組織への影響
  4. 対応と現状
  5. 未公表の事項
  6. 注
  7. 出典
  8. 更新記録

ロシアのYandexがサソボ、カルーガ、ウラジーミルに持つデータセンターが、2026年10月7日の夜から11日にかけて無人機(БПЛА)の攻撃を受けた⁠[1]。Yandex Cloudでは可用性ゾーンのru-central1-bとru-central1-aが使えなくなった⁠[3、4]。Yandexの10月29日の発表では、利用者向けと法人向けのすべてのサービスが復旧し、主要な機能が使える⁠[27]。

経緯

Yandexの10月9日の発表では、サソボのデータセンターは10月7日から8日にかけての夜の攻撃で深刻に損傷し、稼働を完全に止めた⁠[1]。カルーガのデータセンターは10月9日朝に攻撃を受け、インフラの一部が機能しなくなった⁠[1]。どちらでも従業員に負傷者はおらず、緊急サービスとYandexの専門家が現地で作業していた⁠[1]。

リャザン州のマルコフ知事が10月8日にMAXのチャンネルで出した発表では、夜間に州の上空で無人機2機が撃ち落とされ、サソボ地区で企業1社の屋根から火が出た⁠[34、35]。暫定では負傷者はおらず、発表にYandexの名前は無い⁠[34]。

Yandex Cloudはステータスページで、サソボの障害の原因を無人機攻撃で起きた火災と記し、火災はYandex Cloudのインフラの一部に及んだとした⁠[3]。10月8日のうちに、ゾーンを近く再開することはできないとの見通しを示し、代わりの復旧計画を使うよう勧めた⁠[3]。

Yandex Cloudの10月11日のTelegramでの告知では、ウラジーミルのデータセンターのインフラが無人機攻撃で損傷し、稼働は完全に止まっている⁠[5]。負傷者はいなかった⁠[5]。残った資源の構成を不安定とみなし、プラットフォームの稼働を非常モード〔注1〕として、他の災害復旧の計画を使うよう勧めた⁠[5]。

ウクライナ側の発言と主張

Укрінформの10月8日の記事によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は記者団に「私たちは常に鏡のように応じる」と述べ〔注2〕、ウクライナのデータセンターが攻撃されてきたことに応じたと説明した⁠[21]。詳細は明かせないとも述べた⁠[21]。

ウクライナの防衛企業Fire Pointは10月9日、Telegramのアカウントで、ウクライナ防衛軍が無人機FP-1でカルーガ州のГрабцево工業団地にある「Яндекс ДЦ Калуга」を攻撃したと主張した⁠[18]。10月11日には、ウラジーミルにある3つ目のYandexのデータセンターもFP-1で攻撃したと主張し、施設は損傷を受けて稼働が完全に止まったとした⁠[19]。

同じ時期の別の障害

Коммерсантъの10月8日の記事では、同じ日にDDoS攻撃の対策を提供するQrator Labsのネットワークでも障害が起きた⁠[23]。Qrator Labsの広報は、原因を「人為的なミス」と説明した⁠[23]。

Хабрが全文を引いたCuratorの声明によると、Curatorでは10月8日15時30分(モスクワ時間)に技術作業の最中の障害でネットワークの一部が一時使えなくなり、顧客の一部のインフラに影響した⁠[37]。暫定の原因はネットワークの構成を変える作業での人為的なミスで、16時10分に完全に復旧したとした⁠[37]。

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時系列

時系列
日付主体内容資料
2026年10月8日Yandex Cloud可用性ゾーンru-central1-bで電源の供給が途切れたとステータスページで告知した⁠[3]
2026年10月9日Yandexサソボとカルーガのデータセンターの被害を発表した⁠[1]
2026年10月9日Yandex CloudSelectel、К2Cloud、VK Cloudと、顧客の資源を各社の拠点へ早く置けるよう合意したと告知した⁠[3]
2026年10月10日Yandex無人機を使う攻撃などを不可抗力の例に挙げる第11条を置いた利用規約を公表した⁠[6]
2026年10月11日Yandex Cloud可用性ゾーンru-central1-aで電源の供給が途切れたと告知した⁠[4]
2026年10月13日Yandex Cloud現行の顧客について、ロシア国内の全ゾーンの全サービスの10月8日〜31日の利用を無償にすると告知した⁠[4]
2026年10月19日Yandexタクシーの配車や料理の宅配などが、Яндекс Goと各サービスのアプリで再び使えるようになったと告知した⁠[9]
2026年10月23日Yandex Cloud新しい可用性ゾーンを開き、ru-central1-aにあった計算資源を起動できるようにした⁠[8]
2026年10月26日Yandexスーパーコンピューターの「Ляпунов」「Галушкин」「Червоненкис」を新しい拠点へ移しているとTelegramで告知した⁠[28]
2026年10月28日YandexЯндекс Дискに保存されたデータの計96%へのアクセスを取り戻したと発表した⁠[26]

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影響範囲

計算資源の作成とクォータ

Yandex Cloudは、ru-central1-bが使えなくなった後、他のゾーンでも仮想マシン、Kubernetesのクラスタ、データベースを新しく作るときに問題が出るおそれがあると告知した⁠[3]。10月9日の更新で、Managed Service for Kubernetesは、ru-central1-bにある管理コンポーネントを別のゾーンへ移せるようになり、Managed Databasesは、耐障害の構成からru-central1-bのホストを外せるようになった⁠[3]。負荷を他のゾーンへ切り替える作業を終えた後は、他のゾーンのサービスは通常どおり動いており、新しい資源の作成には制限がかかる可能性があるとした⁠[3]。

10月10日の更新では、週末のあいだ計算資源とディスクのクォータを完全に手作業で管理し、資源の追加では重要なサービスがまだ復旧していない顧客を優先すると告知した⁠[3]。サポートは一件ずつ手作業で対応しているため、回答が遅れて届く可能性があるとした⁠[3]。

ステータスページの10月11日の更新では、追加の資源のクォータの発行を一時止め、プラットフォームは制限モードで動き続けている⁠[4]。代わりの拠点に資源を置くことを検討するよう勧めた⁠[4]。10月16日の更新でも、制限モードでの稼働は変わっていなかった⁠[4]。

決済・メール・広告のサービス

表1:サービスごとの影響とその後の告知
サービス影響その後の告知資料
Яндекс Пэй(決済)10月11日、多くの利用者が残高の確認、支払い、送金をできない状態だった10月22日、支払いと送金は前の週の初めから動いているとした⁠[2、10]
Яндекс 360(メール、ファイルの保存など)10月8日、一部の利用者でメールに一時的な問題が出た(広報)。その後、負荷を下げるため一部の機能を一時的に制限した11月3日の状況では、Почтаの6か月より古いメールの一部が読めず、Дискの一部のファイルは開けないことがあり、APIにも制限が残る⁠[11、23]
Яндекс Директ(広告)10月11日、管理画面へのアクセスを一時制限し、広告の配信は続けた10月20日、キャンペーンの作成や編集などの主要なツールを使えるように戻した⁠[12、13]

Yandexのフィンテック部門の責任者は10月11日の文書で、資金そのものはデータセンターに置いておらず、口座ごとの記録は複数の拠点に複数の写しで保管していると説明した⁠[2]。整合性を確かめた結果、記録は1件も失われていなかった⁠[2]。10月22日の続報では、返済できなかった日の支払いは延滞として扱わず、10月16日から返済の操作は通常どおり動いている⁠[10]。Супер Сплитのカード決済は段階的に戻しており、すでに数百万の利用者が使えるとした⁠[10]。

Яндекс Рекламаの10月11日の告知によると、МетрикаとAppMetricaの画面も一時使えないが、統計の収集は続いていた⁠[12]。

他の組織への影響

表2:Yandexのデータセンターの停止の後に障害を告知した組織
組織告知した障害原因の説明その後の告知資料
Цианサービスの可用性に一時影響が出たインフラパートナーの施設での不可抗力の状況10月13日から主要なサービスが通常どおり動いている⁠[16]
Додо Пиццаサイトとアプリが使えず、配達、持ち帰り、店内のいずれの注文もできなかったサービスを載せているクラウドプロバイダでの夜間の大規模な事故10月13日、再び稼働し配達と店舗は通常どおりと書き加えた⁠[15]
АО «Калуга Астрал»ГК «Астрал»のサービスの障害ООО «Яндекс.Облако»のインフラでの障害10月14日、サービスの大部分を新しいインフラへ移し終え、復旧を進めているとした⁠[14、33]
Фирма «1С»1С-Отчетность、1С-ЭДО、1С-ЭПДの障害ウラジーミル州のYandexのデータセンターのインシデント10月20日に完全に復旧した⁠[17]
Россельхознадзор10月11日6時(モスクワ時間)からФГИС «ВетИС»と«Сатурн»を非常モードに移したウラジーミル州での電源の非常停止-⁠[20]

ГК «Астрал»の10月8日朝の告知では、電子の報告、ЭДО、ЭПДのサービスが一時途切れるおそれがあった⁠[29]。同じ日の12時の追記では、Yandexの情報として、原因は無人機の攻撃でデータセンターに起きた火災だと説明した⁠[29]。午後にはサービスの稼働を再開したとし、たまった要求の処理で待ちが出ることがあると知らせた⁠[30]。

10月9日の1С-Отчетностьの告知では、オペレーターのサーバーへの送信は通常どおりで、当局との交換を戻す作業が続いていた⁠[31]。ГК «Астрал»は10月11日には、新たな無人機の攻撃でウラジーミルのデータセンターのインフラが損傷し、サービスの一部に影響したと告知した⁠[32]。データはすべて冗長化して保存されていたと、10月14日の告知で説明した⁠[33]。

АО «Калуга Астрал»のレターでは、障害は10月8日のモスクワ時間1時31分ごろに始まった⁠[14]。10月9日と10月11日にも、障害が再び起きた⁠[14]。原因は、Yandex Cloudの説明と公開の情報から無人機の攻撃と火災だとし、Астралはこれを不可抗力に当たると評価した⁠[14]。

Астралは、ООО «Яндекс.Облако»に原因と影響と解消の時期を正式に問い合わせ、障害の情報を国家コンピューターインシデント調整センター(НКЦКИ)に提出した⁠[14]。Минтрансの命令により、ГИС ЭПДへ送れない間は運送書類を紙で作れるとし、10月8日〜11日の報告の遅れは利用者の責めによらないと説明した⁠[14]。

Фирма «1С»は10月12日の追記で、被災したYandexのデータセンターにあった顧客のデータは他のデータセンターへ移しており、失われていないと説明した⁠[17]。

Коммерсантъの10月11日の記事によると、ロシア全土でЯндекс GoやЯндекс Музыкаなどのアプリが動かず、タクシーの運転手や配達員が登録するЯндекс Проも開かなかった⁠[24]。DownDetectorのデータでは、Магнит、М.Видео、Ламода、Дом.руなどのサイトも使えない状態だった⁠[24]。サンクトペテルブルクのプルコボ空港のサイトも止まり、セルビア、カザフスタン、キルギスの利用者にもエラーが出た⁠[24]。

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対応と現状

Yandex Cloudは、代わりの手段として専用の物理サーバーBare Metalの利用を勧めた⁠[3]。合意した3社は、合言葉「CloudBro」を伝えた顧客の申し込みを優先して扱う⁠[3]。Код.руの10月9日の記事によると、Yandexの広報は、合意に合わせて専門家のチームを追加で割り当て、柔軟な金銭の条件を示し、接続を簡単にしたと説明した⁠[36]。

Yandexの10月10日公表の利用規約では、不可抗力を定めた第11条の例に、無人機やミサイル兵器などを使う軍事行動・テロ行為と、外部の原因による電力・通信の施設の大規模な事故などが含まれる⁠[6]。不可抗力が生じた側は5営業日以内に相手に知らせ、Yandexは公式サイト、個人アカウント、メール、電話で知らせることができる⁠[6]。

Yandex Cloudは10月13日の更新で、10月の請求書には10月7日までに使った資源の料金だけを載せるとした⁠[4]。Яндекс 360も、10月末まで現行の顧客から料金を取らず、支払いを3週間延ばした⁠[11]。容量の超過で長くロックしていたДискのロックも、すべて外した⁠[11]。

Интерфаксの10月14日の記事によると、ロシアのデジタル発展相シャダエフ氏はРБКの取材に、デジタル発展省が主要なシステムを移す追加の拠点の提供でYandexを支援したと述べた⁠[25]。シャダエフ氏は、Yandexが前例の無い攻撃を受けても、あらかじめ用意した予備の拠点に主要なシステムを素早く移せたとも述べた⁠[25]。Yandexの広報は同じ記事で、第三者の独立した拠点を含む分散したインフラと予備の仕組みを長年整えてきたとし、計算資源の配置の詳細は明らかにしないと述べた⁠[25]。

Yandex Cloudはブログで、新しいゾーンは新しいロケーションにあるが、管理画面では旧名のru-central1-aで表示すると説明した⁠[8]。容量を早く戻し、利用者の側で組んだ自動化の設定を保つためとした⁠[8]。アクセスは数日かけて段階的に開き、計算資源は停止した状態(Stopped)で表示され、利用者の側で起動できる⁠[8]。他のゾーンとのネットワークの接続は保ち、Cloud Routerの古い設定は新しいゾーンでは無効にした⁠[8]。

Yandexの10月23日の発表では、Yandex Cloudに保存されていたデータの90.47%へのアクセスを取り戻した⁠[7]。一部のデータと関連するサービスは新しいロケーションへ移し、アクセスを開いたらYandex Cloudのメールで知らせる⁠[7]。仮想マシンやデータベースの作成、Kubernetes、BI、サイバー防御のサービス、AI Studioなどの基本機能は使えるとした⁠[7]。10月28日の発表では、計算資源を第三者の独立した拠点に分けて、Яндекс Дискのファイルを段階的に戻している⁠[26]。

10月29日の第3四半期の決算の発表で、Yandexは、攻撃は報告期間の後の出来事で第3四半期の結果には影響していないとした⁠[27]。2026年の売上高と調整後EBITDAの予想は、攻撃の後に年末までの業績の見通しを難しくする外部の要因が加わったとして取り下げた⁠[27]。今後はインフラの耐性を高め、より分散した運用の形に移ることに力を入れるとした⁠[27]。

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未公表の事項

  • 攻撃した主体についてのYandexの見解
  • 損害の規模(Коммерсантъの10月11日の記事によると、Yandexの広報は攻撃の損害を見積もっているとした⁠[24]。Yandexは10月29日の決算の発表でも、攻撃の影響の評価を続けているとした⁠[27])
  • サソボのデータセンターの設備とru-central1-bの再開の見通し(РБКの10月8日の記事によると、Yandexの広報は、サソボの設備を復旧できるかはまだ確認できないと述べた⁠[22])
  • アクセスを取り戻していないデータの復旧の時期(Yandexは10月23日、残りのデータの復旧を続けているとした⁠[7])
  • 影響を受けた利用者と顧客の数

注

  • 〔注1〕ロシア語の告知では、10月11日の非常モードを「аварийный」、その後の制限モードを「ограниченный режим」と書いている⁠[4、5]。
  • 〔注2〕Укрінформはウクライナ語で「Ми завжди відповідаємо дзеркально」と伝えた⁠[21]。

出典

当事者

関係組織

公的機関

報道機関

更新記録

  • 2026年10月25日8時53分:公開した。
  • 2026年10月25日10時40分:「対応と現状」の文から出典⁠[7]に無い「マネージド」を外し、「他の組織への影響」ではАстралのレターの文を、原因の帰属とАстрал自身の評価に分けた。
  • 2026年10月25日20時50分:日付の表記を月日の形に改めた。
  • 2026年10月26日2時13分:「経緯」の第1文から⁠[1]の更新日を、「他の組織への影響」のАстралのレターの文から⁠[14]の公開日を外した(どちらも出典行にある)。レターの文は障害の始まりと再発の2つの文に分け、段落を問い合わせの文の前で分けた。
  • 2026年11月3日:「影響範囲」の小節名と表1の表題の言い回しを改めた(事実と出典は変えていない)。
  • 2026年11月4日:Yandexの10月26日〜29日の発表、ГК «Астрал»の10月8日〜14日の告知、リャザン州知事の発表、移行の支援についての広報の説明、Curatorの声明、Яндекс 360の11月3日の状況を加え、リードを10月29日の発表に改めた。

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